熊本市中央区の皮膚科 水前寺皮フ科医院 【皮膚科・形成外科・アレルギー科・皮膚腫瘍科・性感染症内科】

ウイルス性発疹症

1.風疹
風疹ウイルス(Rubella virus)感染によって発症します。
潜伏期間は2〜3週間で、皮疹を生じる1週間前より、皮疹が発生して4〜5日後までウイルスを排出します。
つまり、皮疹がでたときには既にウイルス排出のピークは過ぎていることになります。
典型的な症状は、2〜3日間発熱し、発熱が軽快したころに皮疹が出現します。
皮疹は、癒合傾向のない小さな丘疹・紅斑で、麻疹とよく似ています。
癒合傾向あり:麻疹。癒合傾向なし:風疹とされていますが、非典型的は皮疹を生じる場合も少なくありません。
結膜充血、口腔疹(フォルシュハイマー疹)、耳介後部リンパ節腫脹が3徴とされます。
妊娠初期に感染すると先天性風疹症候群を引き起こすため、妊婦との接触を避けることが大切ですが、皮疹が出現する前にウイルスを排出することより、気づいたときには感染させたことになりまますので、予防接種で抗体を持っておくことが大切です。
そこで、2019年4月より、日本では、風疹抗体チェックおよび予防接種が公費負担となる制度がスタートしています。
熊本市における風疹予防接種の実施は以下の通りです。
当院でも検査及び予防接種を実施していますので、ご相談ください。
<対象者>
熊本市に住民票のある方のうち 、次の(1)〜(3)のいずれかに該当される方が対象です。
◎(1)妊娠を希望している女性
◎(2)妊娠を希望している女性のパートナーなどの同居者
◎(3)風しん抗体価の低い妊婦のパートナーなどの同居者(妊婦は対象外)

ただし、以下を除きます
× ・今までに抗体検査をしたことのある方(妊婦検診含む)※1
× ・風しんの予防接種を受けたことがある方(MRワクチン等)
× ・風しんにかかったことのある方

※1 妊娠の経験がある方は、妊婦検診で風しん抗体検査を受けている場合があります。母子手帳(親子手帳)などをご確認ください。
2.水痘
水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella zoster virus: VZV)の感染によって発症します。
このウイルスは帯状疱疹を起こすウイルスと同じです。
生まれて初めて感染すると水痘として発症します。
水痘が治っても、ウイルスは体の中、特に神経節に残っています。
つまり、水痘に罹ったヒトは皆、このウイルスを体の中に持っていることになります。
ウイルスを持っていても普段は特に症状はありませんが、ウイルスが神経を伝って、体の表面に出てきたときには帯状疱疹(別項)として発症します。
潜伏期は2週間程度と言われていますが、水疱が出現する数日前より、水疱が痂疲化するまで、ウイルスを排出するため、「全ての水疱か痂疲化するまで登校禁止」になります。
通常は、病歴と皮疹を診て診断しますが、予防接種の普及による患者数が減少していることや仮に発症しても軽症ですむ場合が多く、診断が難しいことも少なくありません。
ただし、最近では迅速診断用のキット(デルマクイック)が発売されているため、水疱が一個でもあれば、早期に診断が可能です。
治療:他のウイルス性疾患と異なり、水疱や帯状疱疹には抗ウイルス薬が開発されており、早期の投与にて軽症で落ち着く場合が多く、近年は重症化する例はほとんどありません。ただし、放置すると稀に脳炎を起こす可能性もあります。
3.麻疹
麻疹ウイルス(Paramyxovirus)によって発症します。
空気感染、飛沫感染、接触感染など様々な経路で感染し、感染力はきわめて強いとされています。
風疹とは違い不顕性感染はほとんどなく、感染したヒトはほとんどが発症します。
潜伏期間は10日前後で、当初は咳や発熱などの風邪様の症状です。
皮疹は風疹とよく似ていますが、風疹は癒合傾向:なし。麻疹は癒合傾向ありとされ、風疹よりも少し大型の紅斑が多発し、次第にくっ付いて、大きな紅斑に変化していきます。
口内疹は、頬粘膜に白苔を付ける、いわゆるKoplik斑が特徴的です。
紅斑は、治癒してもしばらくは残りますので、治癒の根拠にはなりにくく、登校禁止は「解熱後3日間」となっています。
4.突発性発疹
「生まれて初めて熱を出した」というときのウイルス感染症で最も多いのが突発性発疹です。
ヒトヘルペスウイルス6型や7型感染によります。
ほとんどの赤ちゃんが1歳未満で感染します。
突然発熱し、2〜3日間38℃以上の高熱が続き、熱が下がる頃に顔面や体幹に小丘疹や紅斑が出現します。
一般に予後良好で、抗ウイルス薬も無いため対症療法になります。
発疹は数日で軽快します。
5.伝染性紅斑
ヒトパルボウイルスB19感染で発症します。
小児に多い感染症ですが、大人にも感染することがあります。
顔面の紅斑(ひらてうち紅斑)と四肢の紅斑(レース状紅斑)が特徴的です。
ただし、大人が罹ったときには、顔面の紅斑がでない場合もあります。
飛沫感染で潜伏期は2週間程度です。
微熱を伴うこともありますが、ほとんどは軽症で、一週間程度で自然に治ります。
ただし、治った後で日光に照った場合に紅斑が再燃することがあります。
本人の体調に問題がなければ登園・登校には支障がありませんが、妊婦さんが感染すると胎児水腫や子宮内死亡を起こす可能性がありますので、注意が必要です。
6.手足口病
いわゆる夏風邪の一種ですが、原因となるウイルスは数種類あります。
最も多いのはコクサッキーA16,A6,10、エンテロウイルス71などです。
数年ごとに流行がありますが、エンテロウイルス71による手足口病は稀に重症化することがあり、注意が必要です。
足底や手のひらに丘疹、水疱、紅斑などを生じますが、体にも同様に紅斑が多発します。
特に臀部に多く皮疹がみられるのが特徴です。
咽頭や便中から排出されたウイルスが飛沫感染や接触感染で染ります。
潜伏期間は3〜4日程度とされていますが、学校保健上での登校禁止などの適応にはなく、本人が元気であれば、学校や仕事を休む必要はありません。
有効な治療薬もないために、痒みや紅斑に対する対症療法を行うことになります。
ただし、ごくまれにエンテロウイルス71感染で神経症状や髄膜炎を引き起こすことがありますので、注意は必要です。
7.ジベル薔薇色粃糠疹(別項目参照)
8.EBウイルス発疹症
EB(Epstein-Barr)ウイルス感染によって起こります。
このウイルスは飛沫感染や接触感染でうつりますが、キスや母子感染でうつることが有名です。
ほとんどは無症状か軽微な風邪様症状ですみますが、発熱を細菌性の風邪と診断してペニシリン系の抗生剤を内服した場合には全身に麻疹様の発疹を生じることがあります。
9.カポジ水痘様発疹症
アトピー性皮膚炎などの慢性的な湿疹のある部位に単純ヘルペスが感染することで水疱が拡大する疾患です。
一般的には単純疱疹の病変は狭い範囲に限られますが、湿疹病変があるときには広範囲に水疱やびらん面が拡大することがあります。
その場合には単純ヘルペスとは区別してカポジ―水痘様発疹症と診断します。
治療は、単純ヘルペスと同様に抗ウイルス薬の投与と外用ですが、広範囲に皮疹が拡大したり、掻きむしることで、黄色ブドウ球菌などの二次感染を伴うこともあり、その場合には細菌感染の治療も同時に行う必要があります。
単純疱疹と同様に繰り返して感染する場合もあります。


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