熊本市中央区の皮膚科 水前寺皮フ科医院 【皮膚科・形成外科・アレルギー科・皮膚腫瘍科・性感染症内科】
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細菌感染症(丹毒、壊死性筋膜炎、ガス壊疽)

丹毒(たんどく)


皮膚表面から真皮にかけての細菌感染症です。横方向に広がるのが特徴で、縦方向へ広がるせつや毛包炎とは異なります。顔面に起こりやすく、境界明瞭な紅斑、浮腫、熱感が特徴的ですが、排膿を認めることは稀です。ちなみに、丹は;赤いの意味で、赤い毒素が語源となっています。特に、鼻唇溝部の境界明瞭な紅斑のラインが特徴的です。これは解剖学的に口輪筋が存在するために上口唇部へ感染症が波及しにくいためと考えられます。予後は良好であり、壊死性筋膜炎などへの移行は殆どありませんが、再発を繰り返す場合があります(習慣性丹毒)。原因菌として最も多いのが、黄色ブドウ球菌ですが、溶血レンサ球菌や緑膿菌によって起こる場合もあります。治療は、菌の同定および感受性のある抗菌薬投与が必要ですが、排膿を認める場合が少なく原因菌を同定できない症例も多い。一般的には、セフェム系やペニシリン系の抗菌薬の経口投与を行います。重症の場合には抗生剤の点滴が必要となる場合もあります。




 丹毒の臨床。片側の顔面に紅斑・浮腫を認める。鼻唇溝、下顎においては、境界明瞭である。



蜂窩織炎


真皮から脂肪組織にかけての細菌感染症であり、しばしばリンパ管炎を合併します。好発部位は下肢、次いで上肢ですが、寝たきりの患者などでは、臀部や背部にも起こることがあります。糖尿病などの合併症を有するヒトに起こりやすいとされますが、健康なヒトでも起こりえます。下肢の蜂窩織炎の場合には足白癬の合併を認めることが少なくありません。予後は合併症によるところが大きく、壊死性筋膜炎やガス壊疽へ移行して重篤な転帰をとることもあります。原因菌は黄色ブドウ球菌が多いが、溶血レンサ球菌や緑膿菌によって起こるものあります。治療は、抗菌薬投与であるが、リンパ管炎を伴うような症例や発熱などの全身症状を伴う場合には点滴が必要となります。



 右足部の蜂窩織炎。くるぶしの部分のキズより感染したと予想される。



壊死性筋膜炎


病態:壊死性筋膜炎は皮下組織および筋膜〜筋の組織壊死を伴う細菌感染症です。筋膜は、筋を包む厚い深筋膜と深筋膜と皮下組織の間にある疎な線維性結合組織よりなる浅筋膜の二層よりなります。壊死性筋膜炎が起こりやすいのは浅筋膜です。それは、組織が疎で血流に乏しいために一旦細菌感染が起こると急激に拡大して、組織壊死を来たしやすいためです。血栓形成や組織壊死を伴うために、抗菌薬を投与しても、創部に到達できずに効果が発揮されないため、手術を必要とする場合があります。

好発部位は四肢、特に下肢です。これは下肢が外傷を受けやすいこと、うっ血を起こしやすく下肢に細菌巣を作りやすいこと、足白癬の合併が多いことなどによります。原因菌によりその臨床、予後は異なりますが、一般的には発赤・腫脹で始まり、発熱、全身倦怠感などを伴い、創部の圧痛を認めることもあります。

溶血レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌の頻度が高い傾向にあります。ただし、この中で、Vibrio vulnificusV.vulnificusAeromonas群、A群溶血レンサ球菌(streptococcus pyogenes)の3つについては発症後数日で死亡してしまう劇症型壊死性筋膜炎が存在します。



 

左下腿の壊死性筋膜炎。皮膚表面には潰瘍形成と痂疲の付着を認める。



V.vulnificus感染症


V. vulnificusはビブリオ属のグラム陰性菌、好塩性菌で海水中、特に汽水域に広く分布します。一般的には病原性はないと考えられますが、基礎疾患として肝硬変糖尿病を有する患者においては、稀に壊死性筋膜炎の原因菌となります。外傷などにより感染する創傷型と魚介類の生食により感染する敗血症型の2つがあります。敗血症型の予後は不良で、一旦発症すると死亡率は70%以上にも達します。原因となる魚介類の種類はさまざまであるが、アナジャコ、コチ、ボラなどが多く、欧米で報告の多いカキによるものは日本ではほとんどみられません。

外傷型では、傷があったのにも関わらず海に入った。海岸で怪我をした。魚介類で怪我をしたなどの病歴が重要です。敗血症型のほとんどの患者で肝障害等の合併症があるのに対して、外傷型の場合には健康人にも発症が報告されており、V. vulnificus汚染が疑われる海岸での外傷には注意が必要です。

四肢、特に下肢に好発し、疼痛を伴う紅斑、紫斑として発症し、急激にその範囲が拡大します。約半数に腹痛、嘔吐、下痢などの消化器症状を伴います。紅斑の出現から数時間で水疱、血疱を形成し、血栓形成から下肢全体が疎血に陥り、筋壊死に陥ることがあります。


 


Vibrio vulnificus感染症の臨床。 左下腿の病変。紅斑、紫斑の範囲が数時間単位で、拡大し、次第に水疱・血疱を形成してくる。病変の範囲をマジックにてマーキングしておくと病変の拡大が分かりやすい。



Aeromonas属感染症


Aeromonas属はグラム陰性通性嫌気性菌で、水系の常在菌です。河川や海岸の土中に存在し、水温の上昇とともに菌数も増加するため、7月から9月にかけて患者が発生します。外傷に続発する外傷型が多いが、経口的に感染する敗血症型の報告もあります。壊死性筋膜炎を起こすAeromonas属で最も頻度が高いのはAeromonas sobriaであり、食中毒菌として認定されています。基礎疾患を有するcompromized hostに発生する日和見感染症であり、基礎疾患として肝硬変を含めた肝障害、糖尿病、白血病、再生不良性貧血などがあります。



劇症溶血レンサ球菌感染症(toxic shock-like syndromeTSLS


1980年代より欧米を中心に軟部組織の壊死とともに急速に全身状態の悪化を来すA群溶血レンサ球菌感染症が問題となり、toxic shock-like syndromeTSLS)と呼ばれるようになった。TSLSには壊死性筋膜炎を伴うものとそうでないものがあり、壊死性筋膜炎を伴わない症例の方が経過は劇的で、予後不良である。A群溶血レンサ球菌は蜂窩織炎や壊死性筋膜炎の原因菌の一つであり、何故、その一部が劇症化するのかは、現在のところ不明であり、通常の壊死性筋膜炎であるのか、TSLSであるかの臨床的鑑別は困難です。従って、St.pyogenesによる蜂窩織炎や壊死性筋膜炎の患者では病歴の聴取と全身状態の観察が重要です。溶血レンサ球菌には抗原性物質が多数存在し、また、様々な活性蛋白を細胞外へ分泌するために様々な病態を作り出すと考えられている。V. vulnificusAeromonas群と異なり、基礎疾患を有しない健康な人にもTSLSが起こりえます。治療としては殆どの抗生剤に感受性を有しますが、早期のABPC大量投与が原則です。



フルニエ壊疽(Fournier's gangrane


会陰部、特に陰嚢、陰茎に発生した壊死性筋膜炎は、フルニエ壊疽と言われます。陰嚢や陰茎には皮下組織が存在せず、真皮直下に筋膜が変化した白膜が存在し、陰嚢全体を袋状に覆っています。そのため、一旦細菌感染が起こった場合には陰嚢全体に病変が拡大して重篤になる場合があります。原因菌は、他の部位の壊死性筋膜炎と同様ですが、痔ろうや肛門周囲膿瘍から拡大する症例では、大腸菌によるものが多いとされます。

 


フルニエ壊疽。肛門周囲膿瘍より拡大したと考えられるフルニエ壊疽。表面は糜爛・潰瘍を形成している。肛門部にも壊死物質を付着した潰瘍が認められる。


 

ガス壊疽


ガス壊疽は、クロストリジウム性と非クロストリジウム性に分けられますが、最近のガス壊疽は殆どが非クロストリジウム性です。非クロストリジウム性ガス壊疽はE. coliKlebsiellaなどの好気性菌やBacteroidesPeptostreptococcusなどの嫌気性菌によるものが多く、多くの患者には糖尿病の合併があり、外傷に続発する場合が殆どです。糖尿病患者(糖尿病足)などでフットケアが不良な場合、白癬、胼胝腫、鶏眼などに続発する場合があります。発赤・腫脹で始まり、皮下のガスを触れる、いわゆる握雪感が特徴的であり、独特の「どぶ臭」を伴っていることが多い。レントゲン写真でのガス像を確認することで診断確定ができます。

ガス壊疽も組織の壊死を伴っており、壊死物質をdebridementしなければならないので、緊急手術の適応になることが多い。抗菌薬については、殆どの症例で好気性菌と嫌気性菌が混合感染しており、広範囲のスペクトルをカバーするように選択しなければならない。特にstreptococcus属が混合感染している場合には嫌気性菌との協力作用(synergism)により多くのhyaluronidaseproteaseを産生して病巣を急激に拡大させる可能性があり、緊急手術とペニシリン系抗生剤(特にABPC)の投与が必要です。


右1趾のガス壊疽。



 レントゲン写真で、ガス像(黒い部分)が骨の周りに確認されます。


 



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