夏には虫(昆虫)による皮膚のトラブルが増えます。大部分は塗り薬だけで治りますが、長い間痒みが続いたり、あとかたを残すようなものもあります。また、蜂刺症やマダニ咬症のように、命にも関わる重篤な症状を引き起こす場合もありますので、治療に悩んだりした場合には皮膚科を受診することをお勧めします。 治療法は、原因になる虫によって異なりますが、基本的にはステロイド外用と抗ヒスタミン剤内服です。 |
1.線条皮膚炎 |
アオバアギガタハネカクシ、カミキリモドキ、カメムシなど、いわゆる火傷虫の体液に触れて起こります。特に梅雨時から夏場にかけてアオバアリガタハネカクシによる線条皮膚炎が流行することがあります。5〜6mm程度の小さな虫で、実際に目にすることは稀です。体液が強酸性のために、手で払ったりした部分が紅斑や水疱を形成するのが特徴です。一種の化学熱傷であり、重症の場合には治るのに1カ月程度かかります。また稀に瘢痕を残します。 |
2.毛虫皮膚炎 |
毛虫やガによる皮膚炎には、毒針毛が付着するものと毒棘が刺さるものがありますが、症状は小さな紅斑が「粉をふりかけた」ように見えるのが特徴です。毒針や棘は自然に脱落しますが、局部を触った手で他の部位を触ることで移ったようにみえる場合があります。治療は基本的にはステロイド外用ですが、痒みが強いときには抗アレルギー剤の内服やステロイド内服を行います。 |
3.クラゲ皮膚炎 |
刺胞(毒の入った袋)のある触手に触れて起こる皮膚炎です。クラゲの種類によって症状は違いますが、一部のクラゲ(ハブクラゲやカツオノエボシ)では生命にかかわる場合があります。触れた部分に紅斑や水疱を形成します。 |
4.蜂刺症 |
刺された蜂の種類によって症状は違いますが、ミツバチの場合には毒針が皮膚に刺さっている場合があるので、抜く必要があります。その他のアシナガバチやスズメバチでは毒針の残存はありませんが、激しく腫れることがあります。「蜂に刺されたら、しょんべんをかける」「アンモニアを付ける」とういうのは迷信であり、まったく根拠がなく、不潔になる可能性があるので避けるべきです。蜂アレルギーのある方はショック症状を起こることがあり緊急時にはエピペン(自己注射用のアドレナリン)を使用する場合もあります。 |
5.ムカデ咬症 |
ムカデの種類によって毒物の種類が違いますし、ムカデのサイズによって毒量も違いますので症状も違ってきます。刺し口の特徴としては、並列に2個刺し口があることです。 治療はステロイド外用や抗ヒスタミン剤内服を行いますが、腫れがひどいときにはステロイド内服を必要とする場合もあります。「咬まれた直後に局所を温めると痛みが和らぐ」との意見がありますが、「温めることで血管の拡張を起こし、毒を拡散させている」との意見もありますので慎重であるべきです。 |
6.猫ノミ咬症 |
最近の日本では、ヒトノミやイヌノミはほとんどが絶滅しており、唯一残っているのがネコノミです。普段は猫に寄生して吸血して生きていますが、メスは砂場などの土の中に産卵しますので、幼虫→サナギは砂場などにいることが多く、猫を飼っていなくても砂場などで噛まれる場合が少なくありません。皮疹の特徴は緊満性の水疱を作ることです。 |
7.ダニ刺症 |
イエダニやツメダニによるダニ刺症が多いとされています。寝ている間に布団に潜り込んで吸血するため、顔や手足ではなく、脇腹や下腹部、ふとももなどを刺されることが多いとされています。中心部には刺し口がみられ、連続して複数回さすために紅斑が連続して見られるのが特徴です。 |
8.トコジラミ咬症 |
別名、南京虫とも言われますが、家具の合間などに生息して寝ている間にヒトに近づいて吸血します。近年のグローバル化により海外からの持ち込みトコジラミが増えており、ホテルなどで刺されるケースが多くみられます。 |