水前寺皮フ科医院 |
春から秋にかけて、野山で活動するとマダニに咬まれることがあります。マダニは様々な感染症を媒介することが知られており、日本では、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、日本紅斑熱、ライム病、回帰熱などを引き起こす可能性があります。特に、最近、九州地方では、SFTSの増加が問題となっています。 重症熱性血小板減少症候群(SFTS) ダニに咬まれて1〜2週間後に発熱、消化器症状、頭痛、筋肉痛、神経症状などを引き起こし、血小板減少や肝機能障害を合併して、最悪の場合には死亡する可能性(死亡率6.3〜30%)があります。Severe Fever 日本紅斑熱・ツツガムシ病 ダニに刺されて、日本紅斑熱では1週間、ツツガムシ病では2週間程度で発熱や発疹が生じ、高熱が続きます。皮疹は特徴的で、刺し口(ダニに刺された部分が赤く腫れて、痂疲の付着を生じる)を認めるのが特徴です。治療が遅れれば、まれに重症化します。日本紅斑熱は、日本紅斑熱リケッチア(Richettsia japonica)の感染症で、ツツガムシ病はOrientia ライム病 ダニにさされて1〜3週間後に全身の紅斑が出現し、発熱、頭痛、筋肉痛などが生じる。九州ではまれな感染症であるが、一部大分県の野山(九重地域)での発症が報告されています。ダニが持つBorrelia bavariensis, gariniというスピロヘータが原因となります。 熊本に生息するマダニは主にタカサゴキララマダニとフタトゲチマダニですが、媒介する感染症に差はないと考えられます。 ❶卵 ⇒ ➋幼ダニ ⇒ ❸若ダニ ⇒ ❹成ダニ ❶産卵から20〜30日間でふ化して ➋幼ダニが生まれます。最初に動物に寄生・吸血し、3〜7日後に自然に落下して、脱皮し、若ダニへと成長します。 ❸若ダニも動物に寄生・吸血し、3〜7日間吸血後に自然落下して脱皮し、1〜2週間後には成ダニに成長します。 ❹成ダニは、動物の体温や二酸化炭素などを感知して、動物(人間など)に乗り移り、2〜3週間吸血します。 ❺飽血(お腹一杯血を吸った)したメスダニは自然落下して、産卵(2〜3週間に2000〜3000個)した後に死にます。 ❶〜❺まで、7週〜10週程度がマダニの生涯ということになります。その間3回、動物に吸血することで、栄養を吸収して成長・産卵をくりかえします。吸血できなかったマダニは、その時点で死滅します。病院などを受診するのは、ほとんどが成ダニの状態ですが、幼ダニや若ダニでもヒトに吸血する場合があります。
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若ダニ(1mm程度)咬症の多発。若ダニの場合には3〜7日で自然に脱落するが、ペットなどに付いてくる場合などには多くのダニに同時に咬まれる場合もある。 成ダニ咬症(大腿部)。飽血した場合には1〜2cm程度まで成長することがあります。 治療: 皮膚に喰いついたマダニを無理やり取る(引きちぎる)と、口器が皮膚の中に残ってしまう可能性があります。その場合には炎症が長期間続き、痒みが数年間続くこともあります。また、リケッチアを含んだ器官が残存する可能性もあり推奨されません。 1.Tick Twisterで除去。 2.攝子にて口器を残さずに除去。 3.ワセリンで窒息させる?:あまり推奨されません。 4.冷凍凝固にて死滅させる?:口器が皮膚に残る場合があります。 などの方法がありますが、確実に除去するには、 5.局所麻酔して、皮膚ごと切除+縫縮することです。 SFTSウイルスに対する有効な抗ウイルス薬はありません。リケッチア(日本紅斑熱、ツツガムシ)やスピロヘータ(ライム病)については、ミノマイシンなどのテトラサイクリン系の抗生剤が有効です。 |