<病因> | ||
疥癬(かいせん)は疥癬虫(ヒゼンダニ※、Sarcoptes scabiei)がヒト皮膚(ひふ)の角層(かくそう)内にくっついて発症します。本来は準性病でありベッドを共にする間柄において感染しますが、集団生活の場においては同室で生活することで感染は起こりうるとかんがえられます。最近は病院や老人施設内感染が多いために老人、子供の患者が増加しています。 | ||
<症状> | ||
@ダニが付いてから1週間から1ヵ月間くらい経って痒みがでます。 A激しい痒み、時に眠れないようなかゆみがあるのが特徴です。 B疥癬トンネル(手ゆび、足ゆびの間にぶつぶつができます。図)や男性の陰嚢(いんのう)や陰茎(いんけい)にしこりをつくることがあります。 C全身のぶつぶつや紅みはダニのフンなどに対するアレルギー反応により起こります。そのために、治療によりダニが死んでも、しばらくの間は痒みが残っていることが多いです。 Dなお、最近はダーモスコピー検査にて疥癬虫を直接観察することで診断できるケースが増えています。 |
||
![]() 疥癬トンネル
|
![]() 疥癬虫(成虫)
|
![]() 虫卵 |
<治療> | ||
@イベルメクチン(ストロメクトールR)内服 Aフェノトリン(スミシリンローションR)外用 Bクルタミン軟膏ex.オイラックスR軟膏、オイラックスRH軟膏 C抗アレルギー剤内服 |
||
<イベルメクチン内服> | ||
イベルメクチンは、本来は獣医学領域の糸状虫症の治療剤として貢献している駆虫剤です。 2006年8月に疥癬に対して保険適応となりました。抑制系神経伝達物質であるGABAの作用を増強する可能性が指摘されており、バルビツール系、バルプロ酸ナトリウムなどの薬剤との併用には注意が必要です。 投与方法:イベルメクチン(3mg/錠)を200μg/Kgを空腹時に水のみで内服(体重60kgの患者で、4錠を内服)し、2週間後に再度内服する。2週間後に検査を行い、虫卵が消失するまで継続します。 |
||
<疥癬患者の外用治療> | ||
入浴して全身の汚れ、痂皮をよく落とす。可能な限り毎日入浴してオイラックスR軟膏を全身に塗布する。 | ||
<感染予防対策> | ||
@皮疹に触れたら必ず手洗いを行う。 A衣料、リネンは熱湯消毒、日光消毒が望ましい。疥癬はクモやサソリと同じ節足動物であり、細菌やウイルスとは異なる。従って消毒は無効です。 B浴槽での感染の可能性は低いが、できるだけ最後に入浴し、入浴後は湯船を熱湯でよく洗い流す。 C定期的に殺虫剤を散布する。 |
||
<ノルウェー疥癬> | ||
1848年にノルウェーで最初の報告されたことより銘々された疥癬の重症型。感染するダニは通常のSarcoptes scabieiである。ヒゼンダニの数は、通常型疥癬が、多くても1000匹程度であるのに対して、ノルウェー疥癬では100万〜200万匹にも達するため、他への感染のリスクが高まる。 | ||
<ヒゼンダニの生態> | ||
1.ヒゼンダニは体長が0.4mm程度の節足類である。雌の方が大きく、雄は雌の60%程度の大きさである。第3脚の長さによって雄雌の区別が可能である。 2.卵→幼虫→成虫と脱皮を繰り返しながら成長する。その生活サイクルは10日〜14日である。卵は巣穴である疥癬トンネルに存在し、幼虫の時には毛穴の中に潜んでいる。成虫になると皮膚表面を歩き回り、交尾し、巣穴を作り産卵する。 3.ヒゼンダニの虫体は人体から離れると短期間(2-3日)で死ぬ。しかしながら、高温、多湿環境下では2週間程度生存すると言われており、シーツなどを介して他人に感染する可能性がある。熱に弱く、50℃、10分程度で死滅する。 |