熊本市中央区の皮膚科 水前寺皮フ科医院 【皮膚科・形成外科・アレルギー科・皮膚腫瘍科・性感染症内科】
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皮膚がんについて

■ 皮膚の構造

(ア)ヒトの皮膚は、表面より表皮、真皮、脂肪組織の3層構造よりなります。
(イ)最外層の表皮を作っている細胞の多くは角化細胞(ケラチノサイト)です。
この角化細胞は、生まれてから死ぬまでに、基底細胞→有棘細胞→顆粒細胞→角質と変化します。それぞれの細胞がある部分を基底層、有棘層、顆粒層、角層とよびます。
(エ)この角化細胞ががん化したのが基底細胞ガンと有棘細胞ガンです。

(オ)また、角化細胞はメラニンという色素を含んでいるためにヒトの皮膚には色があります。角化細胞にメラニンを供給しているのがメラノサイトであり、このメラノサイトががん化したものがメラノーマです。

■ 皮膚がんの疫学 

近年、皮膚がん患者数は増加傾向にあります。皮膚がんには全国的な患者登録制度が整備されていないため詳細は不明ですが、1998年から2007年の10年間で発生率が2倍になったとの報告もあります(岡山県医師会報第1312号、2011年6月25日発行)。
その要因として高齢化と紫外線を始めとした環境変化が疑われます。
若いヒトの皮膚がんが増えていないことより、高齢化が最も大きな要因であると予想されます。従って、一層高齢化が進行する日本では、今後も皮膚がん患者数は増加することが予想されます。

■ 皮膚がんの分類

皮膚がんは上皮(表皮)系と非上皮系に大きく分かれますが、大部分(90%以上)は上皮(表皮)系の皮膚がんです。
@表皮部分より起こる皮膚がん
(ア)基底細胞ガン、有棘細胞ガン、メラノーマ
(イ)日光角化症、Bowen病、乳房外パージェット病
A非表皮部分より起こる皮膚がん
(ア)肉腫
@隆起性皮膚線維肉腫
A平滑筋肉腫
B脂肪肉腫

(イ)悪性リンパ腫
@成人T細胞白血病/リンパ腫
A菌状息肉症
皮膚がんは、患者数が多いほうから基底細胞ガン、有棘細胞ガン、メラノーマの順番です。
ただし、悪性度は逆で、メラノーマ>有棘細胞がん>基底細胞ガンの順番です。

■ 基底細胞ガン(Basal cell carcinoma, BCC)

基底細胞ガンは最も患者数の多い皮膚がんですが、
1.転移を起こさない。
2.従って、基本的には命には関わらない。
3.ただし、十分な手術を行わないと再発する。
を特徴とします。
<基底細胞ガンの分類>
基底細胞ガンは、その形や性格により以下の6つの病型に分類されます。

(1)結節潰瘍型:最も多い型で、表面には潰瘍を伴うことが多い。
(2)瘢痕化扁平型:中央は瘢痕様で、周囲には堤防状の盛り上がりが見られる。
(3)表在型:扁平で、体幹に多い。
(4)斑状強皮症型:中央が窪んで、皮膚が硬くなってように見える。
(5)破壊型:結節潰瘍型が進行した型。
(6)Pinkus腫瘍:
<基底細胞ガンの治療>
@検査
基底細胞ガンは基本的には転移することはないので、CTやMRIなどによる転移の検査をする必要はありません。
A手術
推奨文:臨床的に条件の良い基底細胞癌のほとんどは,3〜10mm 離して切除することにより,高い完全切除率と長期寛解が得られる。
(皮膚悪性腫瘍診療ガイドラインより)
1.斑状強皮症型以外の型では、腫瘍より3〜5mm離して切除する。
2.斑状強皮症型では、腫瘍より7〜10mm離して切除する。
B抗がん剤、放射線療法、免疫療法
基底細胞ガンは転移を起こさないので、基本的に不要です。
C放射線療法
放射線療法は基底細胞ガンの治療として有効ですが、手術と比較した場合には治療成績で劣ります。手術ができない場合に放射線療法を検討する価値があります。
D経過観察
基底細胞ガンは、転移は起こさないが再発する可能性は高い(20%〜40%が再発すると言われている)ので、治療後で、キズが落ち着いたら、自分で定期的に再発がないか(黒い斑点ができていないか。潰瘍ができていないかなど)チェックする(セルフチェック)。もし、怪しいと思ったら早期に皮膚科専門医を受診する。再発の発見にはダーモスコピー検査が最も有用です。

■ 有棘細胞ガン(Squamoid cell carcinoma, SCC)

皮膚の表皮細胞由来の皮膚がんで、基底細胞ガン以外のものを有棘細胞ガンといいます。その特徴は、先行病変(がんを発生する皮膚病)を認めることです。
例えば、怪我や火傷のあとかた、日光照射、砒素(ひそ)曝露、放射線、ウイルス感染、ときには、先天性の母斑(皮膚の奇形)などが有棘細胞ガンの先行病変となりえます。

有棘細胞ガンは、皮膚がんの中では、基底細胞ガンに次いで多いがんですが、

1.放置すると転移します。
2.従って、命には関わります。
3.臨床的には結節や潰瘍を作り、大きくなると特有の悪臭があります。
4.前駆病変(前がん状態)を含めると最も多い皮膚がんです。

早期(前駆病変)での手術が勧められます。
<前駆病変(前がん状態)>
1.日光角化症(光線角化症)
長年の日光曝露によって起こった皮膚の老化(がん化)であり、5年以内に20〜40%が有棘細胞ガンになるとされます。ほとんどが顔面と手背に発生します。
最近の皮膚がん増加の一番の問題は、この日光角化症の増加に因ると考えられます。
2.ボーエン(Bowen)病
以前は、砒素(ひそ)摂取との関係が言われていましたが、最近はウイルス感染との関与が指摘されています。表面がカサカサして赤みがあるのが特徴です。
数年から十数年で、有棘細胞ガン(ボーエンガン)に移行します。
3.(熱傷)瘢痕
熱傷瘢痕に起こった有棘細胞ガン。熱傷による引きつれを放置すると、数年〜数十年後にがん化することがあります。
4.脂腺母斑
大部分が頭部に発生する先天性の皮膚奇形です。生まれつきの脱毛(禿げ)として気づく場合が多い。放置すると殆どが、中年期までにがん化します。
<有棘細胞ガンの治療>
@検査
前駆病変(日光角化症、Bowen病など)の時には、転移することはないので、CTやMRIなどによる転移の検査をする必要はありません。ただし、大きくなって表面が潰瘍を形成するような状態では、CT, MRI, エコー検査などで全身の転移の有無を検査します。
A手術
推奨文:原発巣は最低限4mm離して切除する。高リスク病変(解説および別表参照)の場合は6mm〜10mm離して切除する。(皮膚悪性腫瘍診療ガイドラインより)
仮に、全身検査にてリンパ節転移が疑われた場合にはセンチネルリンパ節生検(後述)やリンパ節郭清術の適応になります。
B抗がん剤
術後の抗がん剤は勧められない。転移を起こした有棘細胞ガンに対する抗がん剤治療は数種類のレジメがあります。
C放射線療法
有棘細胞ガンの治療として有効です。ただし、患者さんが高齢であったり、腫瘍が巨大であったりして、手術ができない場合には放射線療法を検討する。
D経過観察
有棘細胞ガンは、転移を起こす可能性があるので、キズが落ち着いたら、自分で定期的に再発がないかをチェックする(セルフチェック)。もし、怪しいと思ったら早期に再診するようにしてください。

■ メラノーマ(malignant melanoma, MM, 悪性黒色腫)

メラノーマは、皮膚がんの中で最も予後の悪いがんの1つです。
メラノーマの患者数は全皮膚がんの5%程度に過ぎませんが、皮膚がんで亡くなる人の80%以上はメラノーマの患者さんです。これは、

1.早期にリンパ節や肺に転移を起こす
2.有効な抗がん剤が少ない(抗がん剤が効きにくい)
3.放射線感受性が低い(放射線治療が効かない)

などによります。ただし、免疫反応を生じやすく(immunologic tumor)、いわゆるがんに対する免疫療法(モノクローナル抗体、T細胞認識腫瘍退縮抗原、遺伝子治療)が期待されていますし、最近は日本でも導入され効果を上げています。
<メラノーマの分類>
メラノーマは、その形や性格により以下の4つの臨床病型に分類されています。つまり、

(1)悪性黒子型黒色腫(LMM):顔に多く発生します。(欧米人に多い)
(2)表在拡大型黒色腫(SSM):背中や腕などに多く発生します。(欧米人に多い)
(3)結節型黒色腫(NM):四肢や体に多く発生します。
(4)末端黒子型黒色腫(ALM):足の裏は手の平に多く発生します。(黄色人種に多い)
(1)悪性黒子型黒色腫(LMM)
左頬に発生したLMM。色素斑の中心は浸潤ガンとなっています。
(2)表在拡大型黒色腫(SSM)
網目状の色素斑を伴った腫瘤が特徴的です。
(3)結節型黒色腫(NM
色素斑を伴わない腫瘤。
(4)末端黒子黒色腫(ALM)

<メラノーマの進行度(病期の進み具合)>
(メラノーマのステージ分類)
・ステージ0〜IVまでに分類する。
・ステージが進むに従って完治が難しくなる。
・ステージを決定するのは、

・腫瘍細胞の深さ。
・腫瘍表面の潰瘍のある、なし。(腫瘍から血が出たりしていないか)
・リンパ節転移のある、なし。
・他への転移のある、なし。
<pT N M 分類>
例えば、深さが1mm(pT1)で、潰瘍がなく(a)、リンパ節転移、他への転移もなければ、pT1aN0M0で、ステージIAの状態となります。
<メラノーマの治療>
@検査
メラノーマの治療の主なものは手術、抗がん剤治療および転移の有無
の検査です。手術前に皮膚以外への転移がないかどうかの検査を行います。
(転移の有無の検査)

a.エコー検査:リンパ節転移の有無などを検査します。
b.CT検査:肺は肝臓などの内臓への転移の有無などを検査します。
(初期のメラノーマでは省略することもあります)
c.MRI検査:脳への転移の有無などを検査します。
(初期のメラノーマでは省略することもあります)
d.PET-CT検査:全身の転移を検査します。
(初期のメラノーマでは省略することもあります)
e.手術(局所麻酔または、全身麻酔)のための検査
A手術
1.進行度(腫瘍の大きさや深さ)によって異なりますが、所属リンパ節への転移の有無をセンチネルリンパ節生検術(付参照)にて判定します。

2.腫瘍は、辺縁より0.5cm(Stage 0の場合)、1.0cm(Stage1〜2の場合)2.0cm(Stage 2〜3の場合)離して切除します。

3.手術前の検査にてリンパ節への明らかな転移を疑われる場合には、センチネルリンパ節生検術は行わずに、リンパ節郭清術を行います
B経過観察
1.定期的(当初は、1〜2週間に1度程度、その後は、進行度によって、3ヶ月ごと、6ヶ月ごと、12ヵ月後と)に外来を受診していただき、メラノーマの再発・転移の有無を検査します。

2.具体的には、診察、エコー、CTなどの画像検査と採血検査を行います。
<センチネルリンパ節について>
メラノーマはほとんどの場合、リンパ行性転移を起こします。
つまり、がん細胞が体のあちこちにいきなり飛んでいくのではなく、

1.がん細胞が、皮膚のリンパ管に入り、
2.所属のリンパ節まで流れていき、そこで増殖します。
3.その後、周辺のリンパ節へも転移していきます。
4.つまり、初期の頃には、転移するリンパ節は、1〜2個の限られたものであると考えられます。
5.この、最初に転移するリンパ節のことを、センチネルリンパ節といいます。センチネルとは、歩哨(見張り番)のことです。
6.つまり、センチネルリンパ節を摘出して、そこにがん細胞の転移がなければ、まだ、転移を起こしていない初期のメラノーマであると考えられます。
7.この、センチネルリンパ節を採って、がん細胞がないことを確かめる手技をセンチネルリンパ節生検術といいます。
8.近年、このセンチネルリンパ節生検術の有用性が、メラノーマや
乳がんで確認されており、保険適応されています。

■ 乳房外パジェット病(extramammary Paget’s disease) 

以前は、乳房外パジェット病は稀な皮膚がんでしたが、近年の高齢化に伴い増加が著しい皮膚がんの1つです。人種差が大きく、欧米人とくらべて日本人などの東洋系に多いとされています。乳房外パジェット病は、皮膚がんとしては、in situ(表皮内がん)に分類されますが、進行すると乳房外パジェット癌(腺癌)となり、リンパ節転移や遠隔転移をおこして死亡することもあります。
(ア)ほとんどが、外陰部に発生する。稀に腋窩や臍部にも生じる。
(イ)外陰部に発生する紅斑のために、白癬(いんきん、たむし)やオムツかぶれと誤解され ている例が多い。
(ウ)アポクリン汗腺由来の腺癌と考えられている。
(エ)表皮内がんであるが、毛嚢(毛穴)部分の表皮にもがん細胞が存在するため、毛嚢部を完全に切除しないと再発・転移する。
(オ)がんの境界が不明瞭な場合が多い
(カ)がん細胞が色々なホルモン受容体を有するので、ホルモン療法や分子標的薬が効果的である。
(キ)放射線感受性は良好であるが、放射線療法での完治は望めない。

などの特徴があります。
<乳房外パジェットの治療>
@検査
・エコー検査:リンパ節転移の有無などを検査します。
・CT検査:肺、肝臓などの内臓への転移の有無などを検査します。(進行した乳房パジェット癌で行う)
・PET-CT検査:全身の転移を検査します。(進行した乳房外パジェット癌では骨転移を起こしやすい)
・手術(局所麻酔または、全身麻酔)のための検査
マッピング生検(mapping biopsy):乳房外パジェット病では腫瘍の境界が不明瞭な場合が多く、ガンの範囲を肉眼所見だけで判断することが困難です 。その場合には明らかながんの範囲から1cm離して6〜12箇所の皮膚を病理検査し、予めがん細胞の有無を確認します。
B手術
手術範囲:推奨文(皮膚悪性腫瘍診療ガイドラインより)
乳房外パジェット病の原発巣を完全切除するのに必要な皮膚側の切除範囲(切除マージン)に関する信頼性の高いエビデンスは存在しないが、病巣の肉眼的境界が明瞭な部分や、mapping biopsyで陰性と判定された部位については、1cm程度の切除マージンでよいと考えられる。その他の境界不明瞭な部位については、3cm程度のマージンが推奨される。
センチネルリンパ節生検:手術前検査にて乳房外パジェット癌と診断された場合には、センチネルリンパ節生検(前述)を行います。
リンパ節郭清:手術前検査にて明らかなリンパ節転移を認めた場合には、リンパ節郭清術を行います。
C抗がん剤
転移した場合には数種類の抗癌剤レジメおよび分子標的薬がある。
D経過観察
退院後は、定期的(当初は3ヶ月ごと、6ヶ月ごと、12ヵ月後と)に外来を受診していただき、乳房外パジェット病の再発・転移の有無を検査します。


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