病因:基本的には病因は不明です。毛穴の一部が膨れてできるとの説や、ウイルス感染説などがあります。皮膚の表面の部分(表皮)が真皮内で増殖して嚢腫(ふくろ)を作ります。内部に角化物質(ふけ)が溜まっている状態です。 粉瘤の病理組織像 皮膚に中に嚢状の構造物があり、内部には、Atherome brei(角質物質)を入れます。時間とともに角質物質が増えて、粉瘤自体も大きくなっていきます。 臨床: 全身にできますが、背中に最もでき易い傾向があります。 上腕内側の粉瘤 膝の粉瘤 額の粉瘤 診断:ほとんどは、視診だけで診断ができますが、エコー検査を行うとより確実に診断できます。ただし、大きいものはCT検査にて確認する場合があります。 粉瘤のエコー像。長径5mm大の粉瘤で、境界明瞭な類円形のLow echic(黒い)陰影が認められ、下床にはHigh echoic(白い影)が認められます。内部は均一であり、血流も認めません。粉瘤のエコー像の典型です。 感染性粉瘤:内部の角化物質に細菌が感染して化膿した状態です。その場合には痛みを生じ、場合によっては発熱することもあります。 青い点線の部分が粉瘤で、右下の部分が化膿しており、一部には膿が付着します。炎症性粉瘤の所見であり、この場合には抗生剤の内服だけでは、症状は落ち着きません。局所麻酔下に3〜4mm程度の穴をあけて、中身(Atherome brei)を出して、穴にはガーゼドレーンを挿入します。2〜3日間は、ドレーン交換が必要です。その後、炎症が落ち着いたら手術を検討します。 治療: @ 放置:気にならなければ、切除する必要はありません。ただし、内部の角化物質(ふけ)に細菌感染がおこると痛みがでます。 A 感染性粉瘤は、1回の手術では治せない場合が多いです。腫瘍に切開を入れて、内部の角化物質を出し、化膿が落ち着いた後の腫瘍を全部切除するようにします。 B 手術:完全に治す方法です。局所麻酔を行い、腫瘍を嚢ごと切除します。 水前寺皮フ科では、年間に150〜200例の粉瘤に対する手術を行っています。 項部の皮下腫瘤です。 ![]() 皮下腫瘤の範囲を点線で書き、腫瘍の中心部に、紡錘形の切開線をデザインします。 局所麻酔を行い、皮膚切開を行い、腫瘍を取り除きます。 切除標本です。長径10mm程度の皮下腫瘤で、袋に入っています。袋を破らないように切除します。 3針縫合して、手術を終了します。デザイン→消毒→局所麻酔→切除→縫合まで、手術時間は5〜6分で終了します。 翌日に診察(創部)の確認を行い、出血などがなければ、その日から入浴は可能です。7週間から10日後に抜糸となります。 抜糸の時に、取った腫瘍の病理組織結果の説明を行います。 予防:化膿しないように皮膚を清潔にする。
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